宮崎駿コミュニケーション

 子供が大好きなものの一つに、トトロ。千と千尋魔女の宅急便などのスタジオジブリアニメがある。それは幼稚園小学校男女を問わないものであり、そのようなものを他にあげようとしても例がない。それに勝てるのはママの存在くらいではなかろうか?と思うにまで昇華した、その作品の個性と魅力の威力を、まざまざ見せつけられた光景がある。

 それは、京都市の各公立幼稚園の集まる学芸会だった。
園児の催しが一通り終わった後、この辺ではレベルの高さで通っているらしい修学院中学校のブラスバンド部の演奏会がはじまった。部活顧問の先生は、園児達向けに幾つかの曲を用意、練習してきていた。当時流行っていた「お魚天国」が流れると、ザワザワしていた会場もピタッと静かになった。その後数曲、童謡など大勢が既知のものが流れ、楽しく場は進行していったのだが...ラスト近くなって子供達の定番トトロの「さんぽ」が流れると、それまではお利口さんに聞いていた子供達が、誰が何をいったワケでもなく、自然発生的に客席のたくさんの所から、「あ〜る〜こ〜♪」という歌声が聞こえてくると、その波は瞬く間に広がり、数秒後には会場の園児のほとんど全員が大合唱。さあ、みなさん歌って!と号令が下ったわけでもないのに、それまで大人しくしていたあの団体が、中には身を乗り出してリズムに乗る子も現れて。こんなに大勢のキッズ、それにつられて(つられてるのは子供か親かは微妙)母親から、愛されて、何回もビデオを繰り返し、見て貰ってること事実が、手にとる様に。

「あ〜っ!いいなあ」
「くやしいなあ〜っ」
こんなにも一手に、子供達の熱視線を注がれる、トトロという作品に嫉妬と、感動を、改めて思ったのでした。僕も見るたび泣くんで、良さは随分分かっているつもり。僕も作家として、死ぬまでには、その域に達せられるよう計画を見直ししなきゃいけません。高すぎるレベル。頑張っても頑張っても届かない。その高さの嬉しさ。